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県内神社取材ー玉垂宮 齋藤ー

◎県内神社インタビュー

―玉垂宮 齋藤権禰宜  鬼夜保存会 宮川会長 ―

【鬼夜は追儺の神事でもあり、豊作を祈る神事でもある】

鬼夜は毎年1月7日の夜に行う追儺の祭事で、1600年余りの伝統がある火祭りです。

当日は鬼面尊神渡御から始まって大松明に火が付くまでの間、いくつもの神事があります。その中で汐井汲み神事がありますが、この時汲んだ水は、4月の御田祭(おんださい)の神事に使われます。本殿から樽を持ち、汲んできたものを神前にお供えします。この御神水を使いお粥を炊き、その年の豊作を占う「粥占い」を執り行います。

神社では神様にお供えするものの中で最上にくるのがお米であり、年間の神事もその年の豊作を祈るお祭りが中心になっています。玉垂宮においては、1月の鬼夜で御神水を汲み、4月の御田祭で豊作を祈り、そして11月23日の新嘗祭で新米を奉納し、神恩感謝をするというのが一年のサイクルです。鬼夜は追儺の祭りでもありつつ、豊作を祈るにあたっての最初の神事でもあります。

【鬼夜の奉仕者を集めるための様々な問題】

今では1月7日の開催が固定となりましたが、それ以前は旧暦で行われ、まさに闇夜を選んで執り行われていました。昔はこの辺りは農村地帯でお役庄さんが多く、仕事始めも曜日も特に関係がありませんでした。しかし今では兼業農家さんが増えてきたことや、正月に地元に帰ってきた人たちも、7日となれば正月終わりでまた各地へ戻ってしまい、奉仕者の確保が時代と合わなくなってきています。若い人たちの集まりが減り、来年の正月は大丈夫だろうかという悩みが毎年あります。

奉仕者の確保の問題は、祭りの準備にも影響があり、4日に大松明を作るのですが、経験のある人が少なくなってしまい、締め方を教えながらの作業になるため、今まで以上の時間がかかってしまうことや、祭り当日の報道の対応、各地から助勢に来てくれた人たちの着付けなど、マンパワーが足りていなのが現実です。

【奉仕する子どもたち】

神事の中で鬼が汐井場で禊をするために、シャグマと呼ばれる子ども達が鬼を囲って警備をするのですが、これまでは小学生の男の子が役を担うという決まりがありました。しかし近年の少子化によって子どもが集まらず、女の子も含めての募集に切り替えました。我々にとっては相撲の土俵に女の子があがるのと同じようなことで、古来から続いてきた形を変えることは大変な決断でした。

昔は鬼夜のことを知っている家庭が当たり前でしたが、今はこちらに引っ越してきた後の子どもたちが多く、夜の神事という事もあり、親からの理解を得ることが難しくなってきています。祭りに参加することが名誉なこと、というのが当たり前ではなくなってきているのが現実です。今では小学校の社会科の授業で我々が学校に伺い、鬼夜の祭りについての話をさせてもらっているので、その子どもたちが家に持ち帰って親の理解へと繋がればいいなと思っています。

【祭りは見るものじゃない、やるものだ】

鬼夜は鬼の神様のお祭りという特色のためか、昔は地元住民だけの秘め事で行われていましたが、今ではJCや商工会議所の方など、奉仕してくださる方を集めて神事を行っています。参加された方々からは「今までは見ている側だったが、やってみると全然違う!来年もまたやりたい!」と思ってもらえています。子ども達も同じ感想であるため、これを地道に続けていきたいです。子ども達の成功体験を作ることができたら、その子たちが親になった時に「子どもの時に鬼夜に出たんだよ」という会話が生まれるので、女の子も男の子も皆が誇りとして語り継いでくれたら一番嬉しいです。

やはりお祭りというのは出てみて初めて分かるものがあります。やらないと感じられないものがある。“祭りは見るものじゃない、やるものだ”と思っています。やると楽しいというのが、我々には染みついているのです。

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